令4・3・29 慶應通信の書籍の論評

本日、慶應義塾大学 通信教育課程 法学部甲類 に合格しました!

 

働きながら大学で法律の勉強をしたいなぁと思っていたら、あの慶應義塾大学に通信教育課程があって、しかも、法学部法律学科の科目を勉強することが出来る!?ことを知って、とりあえず願書を出してみよう!と思ったのが、今回の合格に至る始まりでした。

 

出願から合否発表までの感想を言うと、慶應通信の選考は、かなり謎が多い…。

 

出願者数は?合格者数は?合格基準は?

 

一切分かりません。

 

分かることは、慶應通信の選考方法が「書類選考」であること。

そして、提出書類に志望理由書があり、そこに最大の難問である『書籍の論評』という課題があること。

 

どういう書籍を選んだら良いのか?

どういう感じで書評を書けば良いのか?

そもそも何書いたら良いの?

 

合格した今でも全く分かりません。

 

そこで、私が採った選択は、思い切って所謂『研究書』と呼ばれる書籍を選び、その研究書で説明されている1つの論点について、(私自身の主張は書かずに)問題提起の部分だけを書いてみる、というものでした。

 

かなり思い切った書評となりましたが、一応、合格できた書評なので、今後入学を検討される方々の参考資料となることを願って…

 

0.書籍名

 潮見佳男『新債権総論Ⅰ』(信山社、2017年)

 

1.概要

 本書籍は、2020年4月1日施行の改正民法を前提とする債権総論の前半と契約総論の一部について、極めて詳細に解説した研究書である。また、著者は改正に参画した研究者なので、改正過程の議論等をも詳細に取り上げている点に特徴がある。

 

2.気になった点

 本書381頁の「手段債務と免責事由」の内容について、気になった点を述べる。

 ここで触れられているのは、改正前民法下で「不完全履行と過失の交錯問題」と呼ばれていた問題である。

 改正前民法では、債務不履行責任の根拠を過失責任に求め、旧415条1項の「責めに帰すべき事由」(帰責事由)を故意又は過失並びに信義則上これと同視すべき事由と解されていた。そして、手段債務の不履行と評価される事実と、過失ありと評価される事実は、同一の事実を対象としているので、「債務不履行の要件を充足するときは、帰責事由の存否は問題とならない」とされる。改正内容を前提とした本書の説明もこのように読める節がある。

 しかし、改正民法では、債務不履行責任の根拠を契約の拘束力に求め、新415条1項但書の「責めに帰することができない事由」(免責事由)は無過失を意味しないと解されている。そうすると、たとえ「債務不履行の要件を充足するときは、免責事由の存否は問題とならない」という上記命題が改正民法下でも妥当するとしても、改正の前後では責任根拠をはじめとする前提を異にするので、改正前民法時と異なる説明が必要ではないか。

 ところが、上記問題について、本書に限らず、他の研究書や論文等でも、依然として改正前民法時のような説明がなされている。改正前民法時の説明は、改正民法下においても本当に正しい説明なのか、気になるところである。